窓から外を眺めると、北の地らしいコントラストのある空に、重厚さ際立つ建物が目に入り、まるで異国にいるかの様な錯覚をおこす。
程よい気候が作り出すそよ風が頬を撫で、スピーカーから流れるオーケストラの楽曲はややチープではあるものの、どこかちょっと贅沢な雰囲気を作り出す。その音に、はしゃぐ子供の声が掛け合わさる。駆け回る子どもたちと、それを優しく見守るお父さんとお母さんの姿が窓の下に。
ない。
そう。ここは廃墟の街だ。どれだけ眼の前に景色が広がろうとそこに人は居ない。
頑張って耳をすませたって聞こえてくるのは乾いた風の音、それによってどこかでぶつかり合う不気味な物音、涼しさが増す水の滴る音くらいだ。
この城は宿も兼ねていて、広々かつ豪華に装飾された部屋が多数存在していた。以前ここが幸せ満ちた夢の場所だったと思うと、そのギャップに何とも儚い気分になる。
どの部屋もベッドメイクがされたまま残っているのが酷酷しいが、別に事件があって放置された訳ではない。
いつの間にか外は次第に晴れてきて、露出を合わせるのが困難になってきたが、アンダーを無理に持ち上げるよりも、これはこれで潔い。
窓から見える景色もかなり明るくなった。
それでも人の居ない街には何の変わりもないが。
この城を出たのはちょうど太陽が真上に登る頃だった。
城を出たのち、周囲の景色を軽く探索した。
今後この地にまた足を踏み入れるかどうかは分からない。
でもこの場所はいつまでも残っていない。それが廃墟というものである。
そして今後国内でこれ以上の廃墟に出会う事はないんだろう、なんて思いながら予定が詰まっていたこともあり、後ろ髪ひかれる想いでこの場所を後にした。
グリュック王国に行ってきた編終わり。