今年は日本各地で多くの自然災害が起きた。
タンカーが関空連絡橋にぶつかったり、我が地元北海道では国内初のブラックアウトを味わったり。とはいえ遠い地に住んでいると、色々考えさせられることはあっても、今ひとつ実感が無かったりするものだ。
ところで台風って発生する度に、非常に強い勢力とか、今年最大とか、観測史上とかそういう言い回しが多くないだろうか?これは昔から思っていたことで、もしかしたら西側に住まわれてる方はその都度脅かされてたりしてるのかもしれないけど、いつもなんか煽りすぎてて、拍子抜け感は否めなかった。
逆に常にそんな事を言われると、実際どれくくらいなものなのかは全くピンとこなくて、オオカミ少年的要素が強く、雨風が強いんだろうなぁくらいに思ってしまう。
この日もテレビの中で色々ざわついてはいたが、特に激しくなる気配もなく、夕方まではうっすら小雨は降ってるものの、のんびりな休日の夕方を過ごしていた。
そして日付が変わろうとしてた頃だろうか。いよいよ本格的に風が強く感じたのは。
ちょっと眉間にシワを寄せたくなるくらい外が風でうるさかった。
それから更に一時間後だ。
トタンがはためく音を耳にしたのは。
窓から外を眺めてみたら、目視で50cmは超えてそうな色んなものが空を舞っていたり、斜向いの家の屋根が風でめくれ上がっていたりした。
あれが飛んだらヤバイなって思いながらそれを見ていたんだけど、そこから目線を下に向けると、何か様子がおかしい。
雨が直接窓を叩くので窓は空けられず、ベランダの塀に遮られてよくみえないんだけど、明らかにおかしい。
ということでちょっと降りて様子を見に行ってみた。こういう事をして、人は災害に巻き込まれるんだろうななんて思いながら。
道路に出てみて衝撃が走った。
目で見ていた屋根のトタンは反対側で、正面側のトタンはとうに吹っ飛んでいたのだ。
それが電線に絡み、まるでテントのように傘になって道路を塞いでいた。
それを写真に撮っていると、正面から車が来た。
もちろん通過してくるはずはないだろうけど、少しびっくりした。
この写真で分かるだろうか。屋根が地面にはついていない。電線で浮いているのだ。電線の強度に関心しつつも、停電も時間の問題かもと思った。突風が吹く度にこの屋根はすごい音を立てる。こんなもんが直撃したら体もバラバラになりそうだし、写真を撮りに近づいてそれをくらったなんてニュースが流れたら誰も同情してくれないだろうから、すぐにこの場を後にして、警察に連絡しておいた。
外に出た感じ、雨はそんなに強くもなかったので上からも撮ってみた。
この後サイレンが鳴り響いたので、消防が来てくれたのかと思ったけど、通り過ぎていく。他のところでもなにかあったのかもしれない。通報で訪れた警察官は近くの交番のおまわりさんで、自転車で現れたのでなんか頼りなかった。おそらくこのトタンを目にして同じ様な恐怖を感じていたと思う。凄く慌てたように無線で誰かとやりとりしていた。窓を閉めていてもそのやり取りが聞こえてきた。
それからそんなに経たずして、突風でこの屋根は浮き上がり、地面に叩きつけられた。
おまわりさんも無事そうだ。そして電線も切れず停電はまぬがれた。
それからしばらくして、真夜中の住宅街にはチェーンソーがトタンをぶった切る音が鳴り響き、無事に朝をむかえた。
斜向いの家は屋根こそ剥げてはいるものの、天気もよくいつもどおりの朝だった。
今回の台風で、我が家の家の窓が割れ、育ててたナスは傷だらけになった。
今は窓も新しいものに変わり、ナスは新しい実をつけている。